コンビニパッケージに学ぶ、ビジネスゴールとデザインの関係

賛否両論のパッケージリニューアル

コンビニエンスストア ローソンのPB商品パッケージが4月にリニューアルされが話題になっています。これまでの商品名と商品写真商品がドーンと大きくプリントされたパッケージから、写真を小さくしてイラストを組み合わせたパッケージになりました。「お洒落」「かわいい」という意見と「わかりにくい」「買い間違えた」という否定的な意見で、SNS上の議論が巻き起こりました。

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参考:PBパッケージ、ロゴも「nendo」がデザインを一新(ローソンのリリース、画像も同ページより引用)

 

さらに競合のセブンイレブンが従来の路線を強化するような、商品名を強く押し出すパッケージに改変したこともあり、両者を比較するようなコメントも寄せられているようです。

参考:ローソンのPBパッケージの視認性が話題になる中、セブンイレブンは「オシャレをぶん殴る」主張が激しいフォントで真逆を行っていた

 

通常、商品パッケージの改変が話題になることは稀なのです。全国チェーンのコンビニで普段目にしている商品全体の見た目が変わったことで、違和感として感じられたのだと思います。

 

ここでは、デザインの良し悪しを論じるつもりはありません。このようなデザインに至った背景から、デザインの表現がどう作られているのかを考えてみたいと思います。

 

商品パッケージに求めるものとは何か?

従来、商品パッケージの機能としては、中身を守り、運搬する為、そして中身を判別させるためにありました。さらに店頭では競合他社製品より目立つことを求めてきました。お客様に手に取ってもらうことがゴールだったのです。

その結果として、商品名やブランドロゴを大きく、おいしさを強調する写真を大きくするという表現が定着した訳です。セブンイレブンのパッケージはこの考え方を踏襲したものと言えるでしょう。

では、ローソンは、どうだったのでしょうか。広報担当は、新しいパッケージに求めることを、以下のようにコメントをしています。背景を知るために少し長いですが引用します。

 


「ローソンは『目指すは、マチの“ほっと”ステーション』というビジョンのもと、圧倒的なおいしさ、人へのやさしさ、地球(マチ)へのやさしさの3つをお客さまに約束しています。こうしたローソンの考え方に共感いただいたnendoさんに、やさしさや、おいしさを表現していただけるようなデザインをお願いしました」

 

「ローソンは、牛乳や卵、豆腐、納豆などの食料品をはじめ、歯みがき粉や食器用洗剤など、いつもお客様のご自宅にあるような日用品を販売しています。身近な商品だからこそ、生活空間にとってやさしい存在にしたい。普段の生活にとってノイズになることなく入り込むために、商品についての情報を山盛りにせず、できるだけシンプルにしてお伝えしていきたいと考えました」(広報担当)

参考:「かわいい」と話題のローソンの新パッケージ、デザインは「nendo」 コンセプトを聞いてみた




 

「やさしさ」「普段の生活にとってノイズにならない」ようなパッケージにしたということです。ここからわかることは、ローソンは、店頭で手に取ってもらうことではなく、商品を購入した後、お客様の食卓に馴染むことをゴールにしたのです。

 

これは、店頭での棚の取り合いになる、メーカー商品と小売りのPB商品という位置づけの違いもあります。PBは棚全体で展開するので、隣の競合商品を意識しなくて済むからです。そこで、パッケージに「生活に彩りを与える」という、新しい役割を提案しているわけです。

 

マーケットのルールを変えようとしている

大手小売チェーンではそれぞれのブランドによる安くて品質の良いPBを展開しています。日用品のパッケージは、商品名+商品写真をシンプルに配置しただけでは、どのブランドの商品も似通ってきているのが現状です。そんな中で、同じ土俵で勝負するのではなく、商品パッケージに新たな付加価値つけることは、新たな食卓提案と言えます。

 

結果として出来上がったものは、店頭での判別性については以前のパッケージに劣るのかもしれません。パッケージにこだわるよりも価格が安ければ良いという価値観もあるでしょうし、高齢の方は店頭で見分けやすい方が安心かもしれません。それでもあえて、差別化して「ローソンが選ばれる」ことにこだわったのでしょう。

 

そこには、従来までの店頭の棚での見栄えを追求するのではなく、生活者の家の中の棚にうまく入り込むか、という、勝負するフィールドの設定を変えようとするローソンのマーケティング戦略が垣間見えます。

 

ビジネスゴールが変わるとデザイン表現は大きくかわる

私は、デザインとは、課題解決の手段だと考えています。同じ商品でも、「店頭で目立たないと選ばれない」を課題として「判別性を高めること」をゴールとすれば、セブンイレブンのような商品名と写真を大きくするという表現になります。「商品が生活の中でノイズになる」を課題として「やさしい存在であること」をゴールとすれば、ローソンのような商品名も写真も目立たなくする表現になります。


要するに、ゴールをどこに設定するかが、デザインを決めているのです。逆に言えば、背景や目的がわからなければ、デザインをすることはできません。サイト制作を行う時も同様で、リニューアルや施策について背景から詳しくお聞きして、さらにその認識に誤りがないかを確認してからデザインを行います。


クライアントに提出したデザインに対して、色を変えて、写真を大きくなど指摘が入ることもよくあります。その時でも、その指摘をそのままデザインに反映するのではありません。そのような違和感があるということは、こちらの考えているゴールの認識に誤りがあるととらえて、その点を再確認し、課題設定、ゴール設定を修正してからデザインを検討し直すのです。


このようなやりとりは、クライアントにとって、とてもまどろっこしい、面倒だと感じられることもあるようです。実際に「そんなことはいいから早く修正して持ってきて」というニュアンスのことを言われることもあります。しかし、経験上、そうやってうまくいった試しはありません。ビジネス戦略、商品戦略を正しく反映し、成果を出すためのデザインを作成するためには、課題とゴールの認識共有はとても重要なプロセスなのです。

 

さらに、デザインは一度出来上がって終わるものではありません。公開してお客様の目に触れて、新たな課題が見つかることは、よくあることです。お客様にわかりやすく、使いやすい形に改変しつつ、提供側の意図もより伝わりやすくするか。その最適化の作業も、よりよいデザインをつくりあげるために必要なプロセスなのです。ローソンPBのパッケージも議論が巻き起こることで、さらに研ぎ澄まされたデザインになっていくに違いありません。

 

石原 強 (Tsuyoshi Ishihara)

株式会社アーチャレス 代表取締役社長 / デジタルマーケティングディレクター Webの黎明期である1996年からこれまで20年以上、大手企業のWebサイト構築、運用を手がけ、ネット戦略立案から社内体制づくりを企業担当者とともに実践してきたデジタルマーケティングのエキスパート

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