マーケティングオートメーション(MA)導入の失敗しない進め方

「マーケティングオートメーション(MA)」は役立たずなのか?

商談を増やせるという触れ込みで「マーケティングオートメーション(MA)」を導入してみたけれども成果が上がらない。スコアリング、シナリオ、ユーザー管理機能など、機能満載だけど、どうやって自社のビジネスに活用したらいいのかわからない。結局は、お問い合わせとメルマガの配信にしか使ってない。運用費用もかかるから使うのをやめてしまった。私の周囲でこんな声をよく聞くようになりました。

Blindfolded senior businessman trying to catch dollar bills banknotes flying in the air on gray wall background. Financial corporate success or crisis challenge concept 

 

「マーケティングオートメーション(MA)」は、2000年代に米国で開発された、オンライン・アプリケーションです。日本では2015年頃から「マーケティング自動化」というキーワードで話題になりました。ベンダーは「企業のマーケティングにかかわる業務を自動化することで、販売機会を増やしながら担当者の負荷を軽減するもの。」と説明しました。そんなことが実現できるツールならばと、中小から大手企業まで、こぞって導入が進んでいきました。

しかし、ここにきて冒頭のような「うまくいかない」という言葉が聞かれるのはなぜなのか?マーケティング担当にとっての夢のツールではなかったのでしょうか?

 

うまくいかない理由その1

マスマーケティングとデジタルマーケティングの違いを理解していない

 

議論の前提として、「マーケティング」という言葉の定義を明確にしておく必要があります。これまでのマーケティングは、4マス媒体と呼ばれる、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌を中心に施策を組み立てる「マスマーケティング」と呼ばれているものです。

 

マスマーケティングは、一定期間にメディアの「枠」を大量に購入して、認知を向上し、話題をつくり販売につなげる手法です。マスマーケティングは、多くの人が注目する媒体を使って、一つの「コンテンツ」を繰り返し発信することによって、企業や商品名を記憶に残して、後日、店頭で思い出してもらい、販売につなげます。

 

短期間のキャンペーンで効果を最大化するためには、「いかに人々の印象に残る「コンテンツ」を作成するか。」それを、「いかに多人数が目にする媒体に載せることができるか」が成果を決めるのです。特に影響力の強いテレビCMでは、優秀なクリエイターが、インパクトあるコンテンツを作成して、人々の話題に上るように仕掛けます。

 

それに対して、オンライン(インターネット)を中心に実施するのが「デジタル・マーケティング」です。オンラインにつながる人たち一人一人に対して「最適なコンテンツ」を「最適なタイミング」で提供することによって、商品の理解を深め、販売につなげます

 

ターゲットに刺さる情報をピンポイントに出す。そのために、一回のキャンペーンの効果は小さい。これを長期間、複数回まわすことによって、成果を高めていく手法でです。「いかにきめ細かく対応できるか」が成果を決めます。できる営業マンのように 100人いれば100通りのやり方で提案し「この人(Webサイト)から買いたい」と思わせる信頼関係を構築することを目指します。

 

マスマーケティングはとデジタルマーケティングでは、顧客を獲得するという最終目的は同じですが、集客から顧客化するまでのやり方がまったく異なります。両者の違いを「魚を獲る」ことで例えてみると、マスマーケティングは、トロール漁船のように大きな網でその一帯にいる魚を根こそぎ獲っていく「漁」。それに対して、デジタルマーケティングはカツオの一本釣りのように、狙った魚のいるところで、根気よく一匹一匹釣りあげていく「釣り」のようなものです。だから、やり方も道具も大きく異なるのです。

 

うまくいかない理由その2

デジタルマーケティングに取り組むための組織体制ができていない

 

マスマーケティングとデジタルマーケティングでは、施策の進め方が大きく異なります。マスマーケティングは、一回のキャンペーンで数千万円から数億円という大きな金額が動きます。大規模プロジェクトであるために、入念な準備が必要で、制作にも時間がかかります。マーケティングのプロセス(計画、準備、実施、検証)をだいたい1年でまわすようなペースになります。

 

マーケティング部が市場調査、宣伝部が広告発注、制作、IT部がWebサイト、営業部が販促ツールというように、機能ごとに部門が個別でやってきた。マーケティングのプロセスと部署が共通しているので、リレーのバトンのように順番に役割をこなしていくようなやり方でした。媒体の買い付けは細かい交渉や専門知識も求められるために、取りまとめを広告代理店にお任せすることが多くなります。

 

それに対して、デジタルマーケティングは、結果のフィードバックが速いことと、すべてが数値化されることです。仮説、検証、改善のサイクルを高速で回します。小さい費用で、ひとつのサイクル1週間から長くて1か月程度と短期間で実施、その結果をみて改善。これを繰り返します。数字をみてより成果の上がる手法を見つけていくことで成果を上げていきます。

 

このように常に最適化を考えて施策を調整していくとしたら、企画、制作調査分析が一体となっていなければ到底不可能です。少人数で小回りのきくチームで実践することになります。しかし、これまでの縦割り組織では、部署の壁がボトルネックになってしまいます。デジタルマーケティングの推進には、これまで部署で分かれていた役割を一体にする組織改変が必要になるのです。

 

うまくいかない理由その3

ツールを「効率化」ではなく「高速化」に対応するための仕組みとして活用できていない

 

「マーケティングオートメーション(MA)」は、今あるマーケティングの業務を自動化して担当者の負荷を下げるものではありません。今の業務が大変だから、コストをかけて効率化しようという事では成果はそもそも出ないのです。

 

これまでは、デジタルマーケティングでは、マスマーケティングに比較して大きな成果が出ないと言われてきました。その理由は明白です。大きな成果を早く達成するためには、細かい施策をとても速いスピードで積み重ねなければなりません。しかし、マーケティング担当者がいくら頑張った所で、到底追い付かない回数が求められるからです。

 

しかし、顧客のニーズが多様化する成熟した市場の中で、これからもビジネスを伸ばしていこうとするならば、デジタルマーケティングの導入は企業の不可欠な取り組みになります。そして、デジタルマーケティングの世界では「速度」が、勝敗を分けます。他社より速くPDCAサイクルを回して、顧客に最適な情報を迅速に提供できることが、競合を優位にします。

 

今後のデジタルマーケティングに必須なのが、仮説、実施、検証のPDCAサイクルを自動化して高速で回す「マーケティングアクセラレーション(高速化)」という戦略です。幅広い顧客の個別のニーズに対応した施策を実現しビジネス成果を上げることを目指します。それを実現するためには、テクノロジーの力を借りることが必要です。そのような背景で誕生したのが「マーケティングオートメーション(MA)」なのです。

 

冒頭のような失望の声は、このような「マーケティング」に対する誤解から発生したものです。「マーケティングオートメーション(MA)」の導入を検討している会社は、先ずは社内のマーケティング方針や体制を見直してみてください。ツールを使いこなす環境を整えなくては、望む成果を上げることはできません。

 

石原 強 (Tsuyoshi Ishihara)

株式会社アーチャレス 代表取締役社長 / デジタルマーケティングディレクター Webの黎明期である1996年からこれまで20年以上、大手企業のWebサイト構築、運用を手がけ、ネット戦略立案から社内体制づくりを企業担当者とともに実践してきたデジタルマーケティングのエキスパート

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