企業Webサイトリニューアルを炎上させない発注者の心得

Webサイトリニューアルはトラブルが絶えません

Webサイトのリニューアルで、発注企業から「制作を依頼したが遅延して公開できていない。」「当初依頼したような出来になっていない。」といったトラブルを漏れ聞くことがあります。自社サイトのリニューアルでそのようなトラブルを起こさないためには、どうすればよいでしょうか?Hand pulling pin of fire extinguisher

 

最近では、2019年3月にリニューアル公開をした滋賀県のWebサイトに不具合が多数見つかり、利用者から「うまく表示されない」といった声があがり、県がお詫びのリリースを出す騒ぎになってしまいました。

 

トラブルの原因は不明ですが、メディアの取材に対して、広報課の担当者が「HPの細かい部分の管理は県。業者だけが悪いとも言い切れない」とコメントしています。

 

大きなトラブルが発生する時は、だいたいクライアントと制作会社のどちらにも責任があります。よくあるのは発注側が「プロにまかせておけばいいだろう。」ということで、プロジェクトをキックオフした後、そのまま放置してしまって、いざ公開間近になって、確認したらもう手遅れだった。という状況です。

 

あとになって「あれもこれもやってくれなかった、私達は素人だからわからなかった。彼らはプロでお金を払っているのだからおかしい。」と被害者ぶって叫んでみたところで、後のまつりです。予算も使って、きちんと公開できない事に対して、社内で責任を問われるのは、プロジェクトを発注したWeb担当者です。

 

これまで私は、受注企業側の責任者として数多くの企業Webサイトのリニューアルプロジェクトを行ってきましたが、その中でクライアントとのトラブルが全くないプロジェクトは、記憶にありません。(それをうまく収めるのも腕の見せ所だった訳ですが)

 

その経験から、プロジェクトを担当する際の心構えとして一番大事なのは、トラブルを起こさないようにすることではなく、トラブルが大きく炎上しないうちに、早く見つけて対処すること、だと考えています。そのためには、技術的なことや全体の進行はお任せしていても、発注者が注意すべきポイントが3つあります。

 

1.まず初めにスケジュールをおさえる

まずプロジェクトのスタートに当たっては、発注側がたとえ素人だとしても、どのように制作が進むのか一通りの工程は把握しておく必要があります。そして進行中に「発注側がやらなければならないこと」をいつ、どうやって実施するか、きちんと決めて置かなければなりません。

 

ゴールとなる公開日から逆算して、いつまでに何を準備しなければならないのか、出来上がったものに対して、社内のチェックや承認を、いつ実施するのか。その作業量はどのくらいで、期間はどのくらいあるのか。そういった段取りを綿密に打合せておかなければなりません。打ち合わせた内容は、必ずドキュメントにしておくべきです。

 

制作途中でも、発注側がチェックや承認した範囲は、その時点で後戻りできないポイントだということを意味します。もし後戻りするような要望をした場合は、追加費用を請求されることもあります。大事なことですから、自分だけでは承認できないデザインや内容チェックの時には、上司や関係部署を巻き込みます。いざ承認をとろうとしたら、上司が出張などでつかまらない、関係部署が多忙で対応できない、そんな事がないように事前に根回しをしておかなければなりません。

 

2.進行中は定期的に進捗を数字でチェック

制作側の作業で1週間以上、接触する必要がない場合は、途中報告をしてもらうようにすべきです。滞りなく進捗しているのか確認出来ればよいので、制作ページ数でもいいし、完成を100として何%まで進んでいるかといったことをメールレベルでも報告してもらいます。これは発注側からは見えないので本当にそのように進捗しているかわかりませんが、「きちんと見ている」という態度を示すことが肝心です。

 

社内の変化や、何か新しい要望が上がった場合、早めに共有して方向修正しておく必要があります。「今は忙しそうだし、次のチェックのタイミングで言えばいいか」といって放っておくと、その時点なら作業を開始する前で対応できた修正も、作業を完了してしまうと2度手間になってしまうかもしれません。制作者のモチベーションを著しく下げてしまう原因になります。

 

また、制作側も想定していなかった事態などで、作業が遅れてしまうこともあります。進行が思い通りでない場合、十中八九制作側は「遅れていますが、この後、頑張って巻き返します」と言います。しかし、それを額面通り受け取って放置せず、きちんと理由を聞き出して、必要な対応を議論すべきです。場合によっては、先に取り決めたのとは別の方法に切り替える方が良いということもあります。素早く決断しなければ、作業が遅延したままになることにつながるので、早めのコミュニケーションが欠かせないのです。

 

3.公開前は、こだわりより正確さ優先

公開が間近になると、発注側のチェックとフィードバックの量も増えてきます。だからといって気づいたところから、メールでバラバラに送るのは、見落としの元になります。後で言った言わないといったトラブルにならないためにも、なるべく表などにまとめて、両者で確認しながら消し込んでいくことが確実です。

 

きちんと社内承認をとっていても、この段階で上の方から「思ったのと違う」なんて声が上がることもあります。社内の事情などで、大きな変更が避けられない場合は、制作側とよく話あう必要があります。作業量を確認して、難しいと言われる場合は、公開日をずらすとか、優先順位の低い課題を一旦あきらめて、公開に間に合わせるということも考えるべきです。作業量が増える場合には、スケジュールだけでなく、見積にも影響してきます。

 

発注側から見れば簡単そうな修正でも、制作側から見た影響範囲が全く違うことがあります。特定ページの画像を差し替えたり背景の色を変えるのは、なんとかなるとしても、たとえば、全体にかかわるナビゲーションを修正しようとするのは、つじつまが合わなくなる可能性があるのです。

 

増える修正の作業量の問題だけではありません。他のタスクにしわ寄せがくるのです。それは公開前のテストです。テスト期間中に修正がはいると、テストを止めて修正作業を行います。修正量が多いとテストができなくなってしまいます。テストがおろそかになって見えていないミスを見落としてしまうと、公開後にトラブルに発展するのです。

 

Webサイトは公開後でも修正は容易です。間違った情報を掲載するということ以外は、公開後に修正しても、大きな問題になりません。公開前に指摘のあった細かいこだわりのようなものは、公開したら誰も気にしなくなった、なんてこともよくある話です。

 

制作会社のことを知っていかに味方につけるか

リニューアルには、制作会社に大きなお金も払っているのに、こんなに手間をかけなければいけないの?という風に思うかもしれません。確かに発注者はお金を握っていますから、制作側より強い立場です。そのため、制作も多少の無理は聞いてくれると思います。自分の経験を振り返ってみても、一つくらいの無理な要望ならと思って対応したら、そのあといくつも追加要望が降ってきて、それを断ろうとすると、「なぜ前のは聞いてくれたのに、こちらは無理なのか?」とヒステリックに詰められて、冷静に話ができる状況でもなく、渋々対応する、というようなこともありました。

 

大きなお金を払っているといっても、制作会社は、あなたの会社の仕事だけをやっているわけではありません。他社の仕事も請け負っています。ですから、あなたはきちんとやっていても、他社の案件で無理を言われたり、トラブルになっていて対応に追われていることもあります。「そんなのは制作側の問題だから我々には関係ない。」といって無視してもいいのですが、上級者は、状況を確認して場合によっては、少しだけ譲歩することで、追加の要望を通していくる。といったテクニックを使ったりします。

 

例えば、発注企業の公開(納品)の要望は、9月、12月、3月に固まるのです。その月はどの制作会社も作業が立て込んでいますから、トラブルに巻き込まれる可能性があります。できれば、それを避けて進められるようスケジュールすると、安定してプロジェクトを進められる可能性が高いのです。

 

実際は、ここまで注意を払ってプロジェクト進めていてもトラブルは発生します。そうなると制作会社のせいにしたくなりますが、トラブルを起こそうと思って、プロジェクトに携わる人は誰もいないのです。

 

責任を持って「お任せする」のは「放置する」ことではありません。「本来は相手の仕事だろう」と思える領域でも踏み込んで、制作者を味方につけておいたほうが得をするのです。冒頭に滋賀県の例を上げましたが、Webサイトのリニューアルが、うまくいかなくてダメージを被るのは発注側の企業です。トラブルの時こそ、発注側が積極的に協力して傷の浅いうちに対応していけば、どんなプロジェクトでも成功させることができるのです。

 

石原 強 (Tsuyoshi Ishihara)

株式会社アーチャレス 代表取締役社長 / デジタルマーケティングディレクター Webの黎明期である1996年からこれまで20年以上、大手企業のWebサイト構築、運用を手がけ、ネット戦略立案から社内体制づくりを企業担当者とともに実践してきたデジタルマーケティングのエキスパート

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