オンライン展示会とは、その名の通りオンライン(Web)上で開催されている展示会のことです。
オンライン展示会は、人と人の直接の接触を避けつつも展示会を開催したいというコロナ禍の止むにやまれぬ状況から、行われるようになったという経緯があります。
実際に開催してみるとリアル会場での展示会のような会場費が掛からず、遠方の人でも参加ができるといったメリットを感じられるようになり、積極的に開催する企業が増加しました。
大手イベント会社のPeatixの調査でも2020年2月のコロナ禍以降にオンラインイベント の開催が激増していることがわかります。
(出典:https://blog.peatix.com/featured/2021_event_survey.html)
一方、「参加者の熱量が少ない」「商品を手に取る体験ができない」「オンライン人材が不足している」といったデメリットを強く感じる企業が多いのも事実です。
このような不安を感じた状態で開催しても、目的が達成できないだけでなく、かけた時間や費用が無駄になってしまいます。
そこで、この記事では確実に成果を挙げるためのオンライン展示会で気を付けるべきポイントを紹介していきます。
この記事の目次
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オンライン展示会とは?リアル展示会との違いを比較
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オンライン展示会のコスト
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オンライン展示会の成功事例
オンライン展示会とは?リアル展示会との違いを比較
まずは、オンライン展示会とリアルの展示会を比較した際のメリット・デメリットを比較し、理解を深めていきましょう。
メリット |
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デメリット |
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メリット・デメリットをそれぞれ解説していきます。
オンライン展示会のメリット
オンライン展示会のメリットは、以下の通りです。
- 会場代がかからない
- 今までと異なる客層にリーチできる
- 来場者の行動をデータ化できる
- 天候や交通機関の遅延に左右されない
- 開催期間を長くできる
オンライン展示会のメリット1:会場代がかからない
オンライン展示会はこれまでのリアルの場での展示会とは異なり、場所代や会場費がかかりません。これは大きなメリットの一つです。
これまでの展示会であれば、以下のようにおおよそ1区画あたり60万円ほどの費用がかかっていました。
■会場代の例
展示会の出展 | 出展料 60〜90万円/1小間 |
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イベントスペース | 利用料 10〜100万円/1日 |
ホテルの宴会場 | 利用料 3〜20万円/1時間 |
オンライン展示会では、このような費用を削減できるのでコスト削減ができるでしょう。
実際にオンラインイベントのツールベンダーであるpeatix社の調査でも以下のように会場費がかからないことがメリットだと感じているという調査結果が出ています。
(出典:https://blog.peatix.com/featured/2021_event_survey.html)
当然、オンライン展示会に切り替えるとすると会場費の代わりにサイト制作費などがかかります。
しかし、展示会サイトであれば繰り返し使えるため、長い目で見たコストは削減できると言えるでしょう。
オンライン展示会のメリット2:遠方の客層にリーチできる
オンライン展示会では今まで参加できなかった遠方の客層にもリーチできます。
展示会に参加する場合、会場までの交通費、現地での飲食代、遠方の場合はホテル代、といったコストを参加者は支払う必要があります。
これらは、展示会の大きな障壁になっている場合が多く、実際には参加したいが経費が捻出できないという意見も現場からは聞こえてくるようです。
ターゲットとなる見込み客を取りこぼさないという点に置いてオンライン展示会はメリットがあると言えます。
オンライン展示会のメリット3:来場者の行動をデータ化できる
オンラインでの展示会は参加者の行動を全てデータ化することができます。
具体的には以下の情報を手に入れることができるでしょう。
- ブース間の行動
- 興味があるコンテンツの人気具合
- 参加者の興味の推移
例えば、ブース間の行動であればAというブースに参加したあとはBブースへの参加率が高いなど次回の展示会開催における重要なデータが手に入るのです。
その結果、問い合わせに繋げるための最適なコンテンツの紹介の順番やコンテンツの配置など工夫できる範囲が広がります。
リアル展示会では、会場のスタッフが「なんとなく」で判断していた参加者行動を数値化できる点においてオンライン展示会はメリットがあると言えるでしょう。
オンライン展示会のメリット4:天候や交通機関の遅延に左右されない
オンラインの展示会場ならば、参加者が天候や交通機関の遅延に左右されずに参加できます。
特に雨の日のイベントは、参加率が10%以上落ちることもあるほど重要な要素です。
リクルート社の調査でも、イベント参加が天候によって左右されるという声が多く、リアルイベントの天候に影響は無視できません。
このように、参加を妨げる外部要因を極力排除できる点においてオンラインでの展示会開催にはメリットがあるでしょう。
オンライン展示会のメリット5:開催期間を長くできる
オンライン展示会では、開催期間を比較的自由に決定することが可能です。リアルの展示会では、会場を事前に予約し、その期間内でしか集客をすることができません。
一方、オンライン展示会では一度展示会サイトを作成すれば、永遠に公開し続けることも可能です。
また、生配信をするような展示会ではアーカイブを残すことで、一度作成したコンテンツを使い集客し続けることが可能なのです。
実際に株式会社ZEMONでは、YouTubeで開催したオンライン展示会の様子を再編集し、アーカイブとして公開し続けています。
このように一度開催した展示会はそのままコンテンツとしてサイト内で公開したり、アーカイブとして残し続けることができる点がメリットとなります。
オンライン展示会のデメリット
メリットだらけのオンライン展示会ですが、以下のようなデメリットも存在しています。
- コミュニケーションの熱量
- 偶然の出会い
- 商品を手にとる体験
- オンラインに詳しい人材の確保
それぞれについて解説していきます。
オンライン展示会のデメリット1:コミュニケーションの熱量
オンライン展示会の最大のデメリットは参加者との「コミュニケーションの熱量が低くなる」という点でしょう。
オンラインでの開催では直接話すことができないので、その場の雰囲気や話し手の熱量が伝わりづらく、コミュニケーションが希薄になりがちです。
実際に、オンラインイベントツールの大手である株式会社Event Hubの調査でも以下のような結果となっています。
出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000037.000031178.html
オンライン展示会は、良くも悪くも「気軽」に参加できてしまいます。
そのため、1対多数で話している際に、参加者は片手間で話だけ聞くこともできてしまうのです。
リアルの講演ならば、席を立ちにくいこともありますが、オンラインだと退屈だと感じたら、すぐに立ち去ってしまいます。
リアル展示会の経験が多い人はこの点で残念な感想を抱く人も多いでしょう。
オンライン展示会のデメリット2:偶然の出会い
展示会の魅力である「偶然の出会い」も少なくなってしまうでしょう。
リアルの展示会では、「たまたま歩いていたら偶然良い商品と出会った」というように本来の目的ではないブースに訪れることもあります。
しかし、オンライン展示会では検索機能などにより「目的のコンテンツ」にたどり着きやすいという特徴があります。そのため、「偶然新しい物に出会う」という事象は起こりづらいでしょう。
オンライン展示会のデメリット3:商品を手にとる体験
商品を実際に手にとって体験できないのは、オンライン展示会の大きなデメリットの一つでしょう。
特に製造業や建築業は展示会で実際に商品を触ってもらい試してもらうことによってこそ、品質や魅力が伝わります。
オンラインではそのような体験はできないため、商品に触れてもらうことが目的の展示会の実施は困難となります。
オンライン展示会のデメリット4:オンライン集客やWeb技術に詳しい人材の確保
オンラインならではの集客方法や技術のノウハウが必要になります。
そのため、オンライン展示会を開催するためにはそれらの人材の確保が必要になるのです。
実際に株式会社マイノリティが調査した結果、オンラインでの集客に詳しい人材がいないと答えた企業は22.1%にも上っています。
(出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000087276.html)
さらに、さらに51.0%は兼任という形でいるにはいるが、リソースがなく業務ができていないとのデータもあります。
(出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000087276.html)
もし、人材がいない場合は外注することになりますが、そのコストがかかることもデメリットとして挙げられるでしょう。
オンライン展示会とリアル展示会はどちらを選ぶべき?
それぞれメリット・デメリットがあるオンライン展示会とリアル展示会ですが、どちらを選ぶべきなのでしょうか。
結論から言うと、「それぞれ比較してどちらか一方を選ぶものではない」ということです。
オンライン展示会とリアル展示会にはそれぞれ異なる役割があるため、全くの別物として捉えるべきなのです。
それぞれの役割とは具体的に以下の通りです。
ターゲット | 役割 | |
---|---|---|
リアル展示会 | 商品に触れたり、直接話を聞きにきた熱量が高い参加者 | 問い合わせ、商談などに繋げる |
オンライン展示会 | その分野へのなんらかの興味・関心がきっかけとなったライトな参加者 | 広く参加者を集めてリードデータを獲得する |
リアル展示会とオンライン展示会のターゲットと役割の違いは以下のような購買ピラミッドで表せられるでしょう。
リアル展示会は既に9合目(=商談までもう少しのところまで来ている層)を営業力で捕まえるためのイベントです。
対して、オンライン展示会はまだ山の麓(=興味はあるが具体的に検討には至ってない層)を熱量を高めて比較・検討まで持っていくためのイベントです。
両者はそもそものターゲットとその目的が異なるため「どちらが良いか」ではなく、「どちらが必要か」という文脈で語られるべきでしょう。
最近では、「ハイブリッド展示会」という形で、リアル・オンラインの両方の役割を担った展示会を行う企業も増えています。
例えば、一般財団法人省エネルギーセンターが主催した「第45回地球環境とエネルギーの調和展」はその典型です。
この展示会では、以下のように先にオンラインで展示内容を確認でき、その後リアルの場で同様な会場を視察して商談まで行える日程となっていました。
オンライン展示期間 | 2020年10月26日(月)~2021年1月15日(金) |
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リアル展示会期間 | 2020年12月9日(水)~11日(金) |
つまり、オンラインで広く認知を集めた後に問い合わせまで繋げるためにリアルでの展示会も開催するというのが、ハイブリッド型の展示会の目的なのです。
さらにオンライン展示のあともアーカイブを残すことで、作ったコンテンツを無駄にせず活用し続けるというオンラインのメリットも存分に活用した成功例と言えるでしょう。
このようにオンライン・リアルそれぞれの展示会は役割が異なるため、比較するものではありません。
それぞれの特徴を理解した上で、適切なアプローチを行うべきなのです。
オンライン展示会のコスト
オンライン展示会を開催する際のコストは以下によって異なります。
- 自社開催の場合
- 複数社を誘致しての開催の場合
それぞれの開催コストについて解説していきます。
自社開催の場合のコスト
自社のみの展示会の開催にかかるコストとその相場は以下の通りです。
内容 | 相場 | |
---|---|---|
コンテンツ制作 | サイト制作費 | 50〜200万円 |
イベントツール代 | 50〜200万円 | |
動画などのコンテンツ製作費 | 50〜300万円 | |
撮影機材 | 10〜50万円 | |
スタジオ代 | 5〜100万円 | |
運営費 | 登壇者依頼費 | 10〜50万円 |
外部事務局運営費 | 10〜50万円 | |
販促費 | 外部Web広告運用費 | 20〜50万円 |
バナーなどのクリエイティブ制作費 | 5~20万円 |
規模やクオリティによって幅があるのと、全てのコストがかかる訳ではなく、状況に応じて必要なものを外部に委託することになります。
かかる費用を算出する際には、社内でできることできないことを振り分けた上で、外部に発注したい内容を整理して、それぞれがいくらかかるのか見積を依頼しましょう。
協賛オンライン展示会の場合
他社も誘致して展示会を開くと、自社開催と比較して以下の費用が追加で必要になるでしょう。
追加費用 | 概要 |
---|---|
他社のコンテンツも管理できるプラットフォーム | 1ブースだけを制作するよりも、コンテンツ数が多くなるのでよりプラットフォームの費用は高くなる。 |
他社コンテンツの管理スタッフ | 管理するコンテンツ数が増えるため、その分の確認や納期調整などのスタッフが必要になる。 |
当日の運用スタッフ(自社開催の場合よりも人数が必要) | 当日も参加者だけでなく参加企業の対応なども必要になるため自社開催よりも人数が必要になるでしょう |
レポート制作費用 | アンケートの集計とレポートの作成にかかる費用が必要になる |
上記のような費用が追加でかかるため、事前にコストのシミュレーションをしておきましょう。
オンライン展示会で使用できるプラットフォーム14選
オンライン展示会で活用できるプラットフォームは種類も多く、弊社では代表的な14のプラットフォームの情報を集めて紹介します。
14種の中からでも知識や経験がなければ選択するのが難しいでしょう。
そこで、あなたに適した1つを見つけるために以下のようなフローチャートを作成しました。
フローチャートを使ってまさにドンピシャなプラットフォームを見つけるには以下の記事を参照しましょう。
【徹底比較】オンライン展示会プラットフォーム14選|全ツール直接取材済み
オンライン展示会開催の流れ
実際にオンライン展示会を開催することになったら、以下のような流れで計画を立てましょう。
- オンラインイベントの概要を設定する
- 参加者のペルソナ・カスタマージャーニーを明確にする
- オンラインイベントのKPIを設定する
- オンラインイベント で参加者が得られるものを明確にする
- 具体的な日時場所や準備スケジュールを設定する。
- 参加者を集める方法を検討する
- 予算の割り振りを決める
それぞれのステップを行うべき理由や具体的な方法については以下の記事で解説しています。
【企画者必見!】オンラインイベントを成功させる企画・運営の秘訣をWe徹底解説
ステップごとに章立てて解説しているので、企画する段階ではガイドラインとして活用してください。
オンライン展示会の成功事例
オンライン展示会を実際に行う際には似たような事例から成功のパターンを学んでおきましょう。
過去に実施されたオンライン展示会を3件集めてみました。
イベント名 | 概要 |
---|---|
YAJ冬展示会 | YAMMER EXPO | 自社開催でアーカイブをサイト内で公開しているオンライン展示会 |
BOXIL EXPO 営業・マーケティング展 | 様々な企業を誘致して行われたオンライン展示会 |
シーコン・メタバースEXPO2022 | 実際にアバターが会場内を歩き回るタイプのオンライン展示会 |
YAJ冬展示会 | YAMMER EXPO
農業機械で知られるヤンマーのグループ会社「ヤンマーアグリジャパン」が主催した「YAJ冬展示会 | YAMMER EXPO」は、まるでホンモノの展示会さながらの様子がオンラインで再現されています。
会場内に疑似的に参加者を配置したり、受付ではヤンマーのイメージキャラクターが配置されていたりと、オンラインながら少しでも没入感を高める工夫がされています。
また、展示会が終了した後も展示会を閲覧でき、後から知った人に対しても心配りバッチリです。
BOXIL EXPO 営業・マーケティング展
(引用:https://expo.boxil.jp/event/sales-marketing-2020#eventline)
スマートキャンプ株式会社が主催した「BOXIL EXPO 2020 営業・マーケティング展」は、様々な企業のブースを誘致して行われた「協賛型のオンライン展示会」です。
Eventhubというオンラインイベント用プラットフォームを活用し、5,000名以上の参加者を集めた大規模な展示会となりました。
協賛企業がそれぞれオンライン上のブースにて、以下のような部門に別れて各社のサービス紹介を行い、潜在的な顧客と触れ合う機会を得たようです。
- デジタルマーケティング部門
- 営業管理・顧客管理部門
- テレセールス・営業効率化部門
- マーケティング高度化・データマネジメント部門
また、業界のインフルエンサーや有識者を招いたウェビナーも複数行うことで集客も加速したようでした。
協賛型オンライン展示会の成功例と言えるでしょう。
シーコン・メタバースEXPO2022
シーコン・メタバースEXPO2022は、一般社団法人シーコンソーシアムが主宰し15社が出典したオンラインイベントです。
特徴は以下の画像のように実際にブース内をアバターが回遊する点で、リアルの展示会のように歩き回ることが可能な展示会でした。
オンラインでも実際の展示会のように回遊する経験がしたい参加者から非常に好評だったようです。
以下のようなオンライン特有の「検索機能」もついており、会場内を回遊する体験と両方の機能を味わうことができる画期的な展示会となりました。
オンライン展示会の中でもバーチャル空間で参加者が歩き回るデザインにこだわりたいという場合にはモデルケースとなるオンライン展示会と言えるでしょう。
オンライン展示会についてまとめ
ここまでオンライン展示会についてまとめてきましたがいかがだったでしょうか?
オンライン展示会は、リアル展示会とは異なり以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット |
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デメリット |
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ポイントは、「どちらが良いのか」で選ぶのではなく「どちらが必要か」という視点で選ぶことです。
それぞれターゲットと役割が以下のように違い、目的に応じて必要な展示会の種類を選ぶ必要があるためです。
ターゲット | 役割 | |
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リアル展示会 | 商品に触れたり、直接話を聞きにきた熱量が高い参加者 | 問い合わせ、商談などに繋げる |
オンライン展示会 | その分野へのなんらかの興味・関心がきっかけとなったライトな参加者 | 広く参加者を集めてリードデータを獲得する |
この記事を読んでオンライン展示会の開催について検討のポイントや流れを把握し、自社の目的に合った効果的なオンライン展示会を開催する手がかりとなれば幸いです。
弊社ではオンライン展示会プラットフォーム選定や展示会サイト構築のお手伝いをしております。興味をもっていただいたら下記のサービスページよりご参照ください。