せっかく始めたオウンドメディアを止めてしまう

一時期流行した企業の「オウンドメディアサイト」の撤退が相次いでいます。自社のメディアとして、なんの規制もなくいつでも自由に安価な情報発信ができます。ユーザーと企業が直接コミュニケーションできる場として期待されていたはずです。なぜそれを手放してしまうのでしょうか？

オウンドメディアサイトとは、これまでの企業サイトとは別に、ユーザーに役立つ情報発信を目的としたメディアサイトを立ち上げ、広告費を払わずに、見込あるユーザーを集客できるという触れ込みで、多くの企業が取り組みました。プレスリリースを出して大々的に告知をしたサイトが、ひっそりと閉鎖されているのです。

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閉鎖に至ったからには、当初想定していた成果が出る見込みがないと企業として判断したわけです。オウンドメディア運営を止める理由としては、①想定よりも集客が少なかった、②集客がコンバージョンにつながらなかった。この２つのどちらか、または両方なのでしょう。

①は単純に考えると、集客できなかったはコンテンツがつまらなかったからだ。ということです。もう少し深堀すると、企業サイトに掲載すべき商品やサービスの訴求がメインになってしまったということ。もしくは、内容がありきたりで、わざわざ読みたいと思わせるコンテンツを提供できなかった。といったことが考えられます。

②のコンバージョンは、せっかくの集客けれども販売促進に貢献しなかった。ということになります。来訪者に買う気を起させなかったのか。もともと想定したターゲットとずれていたのか。もともと販売色を出さないコンテンツですから、なにをもって成果としていたのかも問われるところです。いずれにせよ、うまくいかなかった原因はそれぞれですが、これらは表層的な問題にすぎません。根本的な問題はそこではありません。

オウンドメディアの役割は未来のお客様と出会うこと

ここで、集客のための「メディア」についておさらいしてみます。これまで、一般的なメディアとはテレビとか新聞、雑誌のようなマスメディアを指しました。これらは企業から見たときは「ペイドメディア」と呼び、広告費を支払って掲載するものです。それに対して、「オウンドメディア」とは、直訳すると「自社で所有する媒体」です。広義には、パンフレットや企業サイトも含めたメディアで、狭義には商品情報ではない、ブログのような情報発信サイトを意味します。ここで取り上げている「オウンドメディア」とは、後者になります。

両者は、見た目は似てるように見えますが、ビジネスモデルが大きく異なります。マスメディアは企業からの広告収入で成り立たせますが、企業がメディアを立ち上げる目的としては、自社商品・サービスの販売につなげるための集客ということになります。ですから販促費用として予算化されることが多いと思います。そうなると、直近の商品販売に貢献が見られないと継続することができなくなります。広告と比較して費用対効果は低かったという評価になるのです。

しかし、本来、オウンドメディアの成果は、売り上げ貢献にるのでしょうか？すぐに成果を出すのは、企業サイト、サービスサイトの役割です。サービスのメリットを事例などを交えてわかりやすく紹介して、営業へのお問い合わせやサービスの申込につなげます。それと別にオウンドメディアを立ち上げるのですから、別の目的であるべきです。

企業活動である以上、最終目的はビジネスの拡大になります。オウンドメディアの目指すビジネス拡大は売り上げの最大化ではなく、お客様の拡大にあります。具体的には、今のお客様への販売を目的にするのではなく、将来に顧客になる可能性があるユーザーと、接点を持つのためです。将来の顧客を開拓するのがオウンドメディアの役割なのです。

そうなると、コンバージョンに至るまで時間をどう捉えるかという想定が必要になります。企業は通常、1年間で成果を上げることになっていますが、オウンドメディアの成果はその先、早くても3年や5年後になります。成果を短期の販売促進に求めるのは、オウンドメディアの持つ特性とずれてしまうのです。閉鎖に至る根本的な問題は、開始時点でオウンドメディアの目的や成果目標の設定が間違っていた、ということに他なりません。

未来のお客様の接触がネットにふさわしい理由

営業でも広告でもリアルの施策は、売り上げ目標があるので、直近の販売につながる活動に注力します。それに対して、新たなお客様を開拓することは、営業成果につながりません。いくら将来のためとはいえ、見込みの低いお客様への対応に手間をかけたくないのは当然のことです。しかも、将来に向けて新たなお客様との接触を増やすというのは、とても非効率な活動です。ですから、そのために費用をかけて広告を打っても無駄になってしまいます。

非効率な活動を大きなコストをかけずに実施したい。この矛盾を解決するためにネットを活用するのです。自社のメディアであれば、かかるコストは下がります。自由に発信できますから、複数のターゲットに対していくつものアプローチをしていくことも可能になります。

今のビジネスがうまくいっているから、これから先も問題ない、と考えているならオウンドメディアを立ち上げる必要はありません。しかし、どんな企業でも今のお客様だけ相手にしていたのでは限界が見えてきます。競合も追い上げてきますから、市場は奪い合いになるでしょう。世の中の変化でメインにしている商品自体の価値が低下することも考えられます。将来にわたってビジネスを広げていくためには、新しいお客様をつかまえて、新しいニーズに応えていくことが求められます。

信頼されるコンテンツをどうやって作ればいいのか

オウンドメディアの必要性を感じたとして、上手に運営をして集客をしていくためには発信する「コンテンツの調達」が問題になります。オウンドメディアの成否を分けるのは、コンテンツを確実に調達できる仕組みづくりにあります。

うまくいかないのは、コンテンツ制作会社に編集を丸投げするからです。コンテンツのプロでも、御社のビジネス分野のプロではありません。ネットはきれいな表現ではなく、つたなくともその人のこだわりや想いのこもったコンテンツを尊びます。その制作物自体のクオリティではなく、情報そのもののオリジナリティが問われます。

社内からオリジナルな情報を出すことです。一般的なメディアとは、企業に取材をして記事にするところから始まります。オウンドメディアでは、自社内で必要な人にインタビューをすることで記事を作成します。もちろん文章を整えるためにライターに依頼することはあるでしょう。しかし、テーマや中身は自社の持つ資産を活かすべきです。それによって他社との差別化が可能になるのです。

自社でコンテンツを作成して、これ以上更新が増えるなんて、今の業務で手一杯だ。というWeb担当者は叫びが聞こえてきそうです。ですから、サイトのコンセプトやコンテンツのテーマ、ターゲットに響くキーワードと言ったオウンドメディアの企画や、社内で専門知識がなくても容易に更新できるシステム構築に関しては、プロの手を借りるのが手っ取り早く始められます。

新しいお客様と新しい関係づくりをする

未来のお客様と早々と接触する意義はなんでしょうか？それは、いままでと違った新しい関係を作ることができることです。例えば、古くからの大口のお客様ですと、無理な要望でもはっきり断れないでしょう。それはそれまでの実績と、直近の売り上げのためには致し方ないことです。しかし、新しいお客様と新しい関係を築くことができれば、状況は変わります。

ネットは困ったことがあると情報を探しにいきます。その時に有用な情報を提供してくれた相手をとてもありがたく感じます。それは個人でも法人でも一緒です。そういう意味で、ネットは、狭い分野に特化することでの「先生」とか「専門家」として差別化した立場をとりやすいメディアといえます。人はどのように知り合ったかで相手との上下関係が変わってきます。単なる出入りの業者の一つなのか、教えを請うための専門家なのか。その分野の達人、先生としての立場で知り合えば、そのあとのコミュニケーションは楽になります。これまでよい情報をくれていたのだから、そんな会社の商品はきっと大丈夫だろうと信頼をもってもらえるわけです。

実際、今ビジネスが成り立っているのも、先輩たちが作ったサービスやブランドに乗っているからです。オウンドメディアを活用した情報発信は、会社を次世代に受け継ぐために今から取り組むべきことなのです。すぐに成果が出ないといってあきらめるのではなく、粘り強く続けることによって、未来のお客様とのコミュニケーションを積み上げることができれば、きっと未来の社員に感謝されることとなるでしょう。

マーケティング成果を上げるオウンドメディアの作り方