Webリニューアルコンペで提案依頼書(RFP)を作成する意味

提案依頼書(RFP)を作成するのが難しい

Webサイトのリニューアルを行うために外部の制作会社を集めて競合コンペによる提案依頼をする場合、最近では、提案依頼書(RFP:Request For Proposal)を作成することが一般的になってきました。しかし、「RFPをどう作成していいのかわからない。」「作成するのが難しい。」という声も多いのです。

Back view of businessman drawing sketch on wall

ネットで、「RFP 書き方」といったキーワードで検索をすると、たくさんの記事やテンプレートが見つかります。細かい違いはありますが、おおまかには以下の項目を埋めれば完成します。

  1. 背景・課題
  2. 目的・目標
  3. 期間・予算
  4. 提案を依頼する範囲
  5. 要望、制約条件

項目だけ見ると、ビジネスで伝えるべき基本的な内容です。社内資料なども同じような書き方を求められると思います。これがなぜ、「難しい」ということになるのでしょうか。

提案依頼書(RFP)の具体的な書き方を知りたい方はこちら。

【テンプレ&例文付き!】誰でも30分で作成できるRFPの書き方

 

作成を「受注者まかせ」にしてしまうことが問題

ちょっと厳しい言い方かもしれませんが、自社に必要なサイトを「受注者まかせ」にして待ちの姿勢になっていることです。制作者はプロだし、発注側の意図をくみ取って、提案してくれるだろう、と考えているのかもしれません。受注側の制作会社から見ると、担当者がリニューアルの成否を自分の責任として考えていないように見えます。

 

そんな依頼でも、これまでに取引のある制作会社や、代理店は、お付き合いとして、何らか提案してくれるでしょう。しかし、発注をちらつかせれば、誰もが喜んでやってくれる訳ではありません。優秀な制作会社ほど「良い仕事」を求めて「コンペには参加しない」「(中抜きのない)直取引にこだわる」と宣言しています。

 

コンペは手間をかけて対応したとしても仕事にならない可能性があるわけです。忙しい会社は、提案に手間がかかったり、決まるまでに時間のかかる案件は避けたいと思います。それ以上に、獲得してもトラブルになりそうな案件は最初から避けておきたいのが本音です。

 

制作会社は、提案依頼に添付されたRFPを見て、案件の質を判断します。質が低いと、担当者の質も低く見えます。そういう「分ってない担当者」の案件はトラブルになりかねないので、「今はちょっと忙しい」とやんわり断りを入れるでしょう。制作者が「提案をしたくなる」RFPを提示できないと、頼みたい会社から提案を受けることが難しい時代になっているのです。

 

レディメイドとオーダーメドでは購入者の手間が大きく違う

では、発注側が制作会社に上手に依頼するにはどうすべきなのでしょうか。視点を変えて「家の購入」を例にして考えてみましょう。あなたが新築の一軒家を購入するとします。大きく分けて2つあります。1つ目は、分譲の「建売」を買う、2つ目は、土地を買って家を「注文」する、という購入方法です。

 

「建売住宅」とは、同じような大きさの土地に、規格の決まった家を建てて販売します。いわゆるレディメイド(既製品)です。ファミリーや3世帯などターゲットとなるお客様の使いやすい間取りで作られます。モデルルームを内覧して、壁紙や設備を自分好みにカスタマイズすることが可能です。購入する家とほぼ同じものを目で見て、中に入って確認できますから、隅々までチェックして気に入れば購入するし、他の物件と見比べてより自分の好みに合った方を選べば間違いありません。

 

「注文住宅」とは、施主の要望にあわせてオーダーメードで家を建てます。家の構造や内装、設備まですべて、施主が決められます。ただし、土地の建築制限や建築基準法、木造、鉄骨などの工法によって、できることできないことがありますから、自分のこだわりを実現するためには、建築家や大工さんと綿密に相談した上で、進めていかなければなりません。

 

一点モノですから、出来上がってみないと、施主はどのような家になるのか正確にはわかりません。設計図を見て想像していたのと仕上がりでは「少し違った」と思うことも出てきます。作った後で直すのは限界がありますから、それがたとえ大工さんのミスだとしても、ある程度までは譲歩も必要になります。注文住宅は建売住宅を購入するよりも、ずっと自由度が高いですが、施主の責任が重く、度量の大きさも問われるのです。

 

リニューアルを成功させるためには、発注者の責任が大きい

これをWebに置き換えると、「建売住宅」は、ECサイトなどでよく利用される「クラウドサービス」「パッケージシステム」が近いでしょう。企業Webサイトで共通で必要な機能が揃っていて、発注側は自分に必要な機能を選んで利用します。出来上がっているシステムですから、建物の内覧のように購入前の事前確認が可能です。一定の試用期間が設けられていて、そこで自分の会社で必要な機能を確認したり、実際に使ってみて評価します。予想と違って機能が足りなかったり、自社のやり方に合わないと思ったら、その期間に断れば費用はかかりません。同じようなサービスを比較検討することも容易です。

 

それに対して「注文住宅」は、「受託での開発」ということになります。まず発注側の要望を聞いて、必要なサーバーやアプリケーションを選びます。それらを組み合わせて、さらに足りない機能は、個別に開発(スクラッチ開発)します。最初に制作会社を選びますが、やってみないことには良し悪しも分かりません。最初の提案通りやろうとしても思うようにいかないことも多く発生します。そのような場合、制作側から提示される代替え案を、発注者が判断して承認して進めなければなりません。

 

注文住宅で、自分好みの家を建てるコツは、まず最初にどのような家を建てたいのかというイメージをしっかり固めて設計を依頼することです。そこが曖昧だと必要な間取りや収納を確保できなかったり、無駄な設備で維持費が増えてしまうこともあります。同様にWebサイトのリニューアルにおいても、まず、何のためにどのようなサイトを構築するのか、しっかり固めておくことが重要なのです。方針が無いと、制作中に適切な判断ができず、制作者が迷走して余分な時間がかかってしまい、スケジュールが遅延することになります。誤った方針のまま出来上がってしまったら、そこから修正しようとしても大きな後戻りとなる為、その分のコストを追加で支払わなければなりません。

 

RFPとは発注側がやりたいことを伝えるためのもの

冒頭に上げたようにRFPの項目自体は、ありふれたものです。発注側のやりたいことが伝わればシンプルなもので良いのです。私が過去に相談される時に担当者から出るセリフには、以下のようなパターンがありました。そこで、それぞれの問題点と解決法をまとめてみました。

 

「何をしたらいいか、専門家からの提案がほしい」

すべて丸投げで依頼というパターンです。担当者の立場としては、リニューアルをする必要があるかわからないけど、「社長から急に話が降ってきた」りして、周りに相談しても、「君の担当だから」といって避けられる。なんて状況があるようです。

 

提案する側から見ると、上からきた指示をそのまま伝える「伝書鳩タイプ」とでも言えるでしょうか。担当者として、何をすべきかわからないならば、しっかり社内で確認、議論すべきでしょう。その状態ですと、項目を埋められないのも無理はありません。それが出来ないと思わせる依頼は、その後のプロジェクト進行でもトラブルの臭いしかありません。

 

せめて、どういうきっかけでリニューアルをやるべきと考えたのか、指示した当人に確認すべきでしょう。ユーザーからクレームがあった、関係者から改善を求められた。といった理由ならその内容を背景・課題に設定すればいいのです。

 

そのあたりを突っ込んで聞くと、ライバル会社の社長に「お前の会社のサイトはイマイチだな」なんて言われたのがきっかけです。と苦笑いされたこともあります。社外にはいいにく社内事情もあるかもしれませんが、そういったことをあえて共有して巻きんでいくのも一つの手です。

 

「全部埋めないとダメなのか、提案を狭めたくない」

次は、上記の1と2は埋められたが、予算や範囲設定が曖昧というパターンです。せっかくやるならもっと予算をかけたほういいのか、どうせならあれもこれも盛り込みたい。といった担当者の思いがあることが多いです。

 

丸投げよりは幾分マシですが、どこからどこまでの範囲かによって、スケジュールも予算も変わってきます。時間や予算をかければ素晴らしいものができるとは限りませんし、あれもこれもと盛り込んでいると当初の目的が曖昧になります。このような案件は、プロジェクトが迷走してスケジュールが遅延する状況が目に見えます。

 

これまでの経緯から予算はある程度想像できるでしょう。それを超える社内稟議を上げても「こんなに予算がかかるのか」と社内で議論になり、案件そのものが無くなってしまうのがオチです。前回のリニューアル費用を調べたり、日々の運用費用を調べて、それに少し上乗せするということで設定するのも手です。

 

せっかくのリニューアルの機会で、やりたいことをいろいろ盛り込みたい気持ちもわかります。そういう場合は、施策に優先順位をつけて、どうしてもやりたい範囲と可能なら含めてほしい範囲を分けておき、予算から出る部分も見積をしてもらえば良いでしょう。それによって見積を比較しやすくなるし、「予算内ならここまで、でも少し費用を足せばここまでできる」と社内にも説明しやすくなります。

 

「作成したが、これで正しいか自信がない」

項目は一通り埋めてあるので、一見よくできているのですが、書式にこだわりすぎるというパターンです。真面目な担当者が陥りがちですが、いろいろな記事を読み、テンプレートを組み合わせて、社内の要望を集めて集約して頑張って作成したのかもしれません。WebリニューアルのRFPであれば、せいぜいA4で10ページ程度にまとまりますが、50ページ以上ある「大作」が送られてくることもあります。

 

ものづくりの条件は細かいのに、肝心の、背景、目的、施策の項目が必ずしもつながっていないかったりします。目的が売上向上だけど、目標はコスト削減になっていて矛盾していたり、コンテンツを増やすけれど、外注費を減らすといった、公開後の実現が難しいことを要望していることもあります。

 

そういった点を質問すると、「専門家」からも提案が欲しい、なんて言われることもあります。それでは形だけ整っていても意味がありません。細かく指定されていた方が見積は正確に出せますが、自分が専門でないこともあれやこれやと盛り込むと、提案側は、それを守る必要がありますから一つ一つ検証します。その結果、提示された費用におさまらない。なんてことになりかねません。せっかく提案を受けるのですから、餅は餅屋に任せた方がうまくいきます。

 

それでも、自分の考えに合った制作会社を選ぼうとするならば、提案項目や条件として盛り込むのではなく、導入したい技術や開発手法について提案の時に見解を聞かせてほしい「質問事項」としておくのが有効です。提案での回答を聞いて納得できる会社を選べばいいのです。

 

最後に、悩める担当者へのメッセージ

発注者が提案依頼書(RFP)を作成することは、リニューアルを成功させるために最も重要な仕事です。項目を一つ一つ整理して埋めておくことによって、発注者自身の中で出来上がりのイメージを固めることができます。それがあれば、誰に制作を任せたとしても、間違いなく成果の上がるWebサイトを作り上げることができるのです。

 

提案依頼書(RFP)の書き方についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

【テンプレ&例文付き!】誰でも30分で作成できるRFPの書き方

 

 

石原 強 (Tsuyoshi Ishihara)

株式会社アーチャレス 代表取締役社長 / デジタルマーケティングディレクター Webの黎明期である1996年からこれまで20年以上、大手企業のWebサイト構築、運用を手がけ、ネット戦略立案から社内体制づくりを企業担当者とともに実践してきたデジタルマーケティングのエキスパート

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