ユーザーが買わなかった理由を考えると新しいサービスが見えてくる

お客様の定義とは何か?

お金を払ってくれる人がお客様というのは当たり前の話です。一般的にお金を払わない人はお客様とは言いません。しかし、今、店内で商品を見ている人はお客様でしょうか?そのまま何も買わずに帰った人はお客様では無いのでしょうか?もしかしたら、戻ってきて購入するかもしれません。買わなかったお客様に注目することが、これまでにないサービスや顧客体験を生み出すきっかけになるのです。

Bokeh view of Hong Kong Busy road

レストランや居酒屋さんなどの飲食店では、来店して着席すれば、100%お金を払います。来店者=購入客という訳です。物販をするお店は、来店者>購入客という関係になります。日常の必需品かつ価格が安いものほど、購入客の率が高く、趣味性が高くて価格が高いものは、購入客の比率が下がります。日常的な衣食にまつわる商品を扱うスーパーと百貨店の違いを想像してみると理解しやすいでしょう。


しかし、これまで買わなかった人を追跡する技術がなかったために、ほとんど意識されていませんでした。最近になってコンビニエンスストアで、顔認証の技術で個人を判別し、来店者がどのような行動をとったのか、追跡するようなテストを繰り返しています。最終的にはamazonGoのような無人店舗を目指すのでしょうが、来店客の行動を分析することで、買わなかった客の行動を分析して、店内のレイアウト改善に生かしているようです。

参考:手ぶらで買い物できる“顔認証コンビニ”、セブン-イレブンとNECが都内で開始 オフィス向けに展開

 

買わなかったユーザーに注目して売り上げを増やす

オンラインビジネスでは買わなかったお客様に注目することは当たり前のことです。そこでで、生み出されたサービスもあります。ECサイトでは、アクセスログによって、買った人も買わなかった人も等しく追跡可能です。何度目に来店して買ったか?といった分析も日常的に行われて、それを元にしたユーザビリティ(使い勝手)を向上する試みが実践されています。


買わなかった人にも、様々な理由があるでしょう。買おうと思ったけど、欲しい商品が売り切れてた、とか、思ったより高かったので、別の店と比較したくなった、とか、買う前の下見をしたい、とか、そもそも買う気は無いけど、見て回るのが楽しいとか。この理由に対して、個別に対応することで、購入を増やせる可能性があります。


例えば、お金を払う段階になってやめた理由に注目したのが「カート放棄メール」です。あなたにも心当たりがあると思いますが、ECサイトで購入ボタンを押してカートに入れたけど決済をしなかった商品があると、「買い忘れではないですか?」とメールでお知らせが来ます。以前は、カートを一定時間でクリアしていましたが、クリアする前に会員のデータと照合してメールを送る仕組みを作成して売り上げを増やしたのです。


ECサイトでは、カートに商品が残ったまま、決済を行わないというユーザーが一定数存在します。買おうと思ったけど手続きを忘れた。実際にお金を払う段階で思い直した。他の店もチェックしようと思った。そんなシーンが想像できます。実際に買い忘れなら思い出すきっかけになり、たとえ気が変わったのだたとしても再来訪のきっかけになるのです。他店で買ってしまったとか、きっぱりと買うのをやめた。という人には、効き目がありませんが、迷っていて、決定を先送りしている人には効果があるのです。

 

リアルでも買わない人お客様ととらえると売り上げが伸びる

購入にあたって、お客様がどんな気持ちでいるのか、を想像してみることが大切です。購入には順序があります。これまでの店舗ビジネスでは「AIDMA」と呼ばれる購買行動モデルが有名でした。このモデルにおいて、お店の来店は目的を持った人が買いに来る場所です。それ以前の行動、商品を知って興味を持たせるといった集客の要はマス広告でした。


オンラインの販売では、このプロセスを一気通貫できるようになりました。検索エンジン広告やSNSで認知させ、自社の記事で関心を持たせます。さらに知識を深めるべく情報を収集し、納得したところでECで購入するのです。これが、オンラインの時代にアップデートされた、「AISAS」と呼ばれる循環型の購買行動モデルです。何かのきっかけで、必要性を感じて興味を持ち、ネットや知人から情報収集して購入する。その後に買ったものを共有する。というような行動をとるということです。


スマホを持ったユーザーは、いわば無数の店舗の入り口に立っているようなものです。気になったら、すぐにその場で売り場であるWebサイトにアクセスします。家具の販売では、ネットで情報収集して、店舗で確認、検討してECで購入するというのも当たり前になっています。実際に、家具小売のニトリでは、自社の成功要因を「店がショールーム代わりになっている」と分析しています。

参考:「店はショールーム」でOK、通販好調のニトリ

 

リアルとネットの両面から、ユーザーが満足できる体験を提供することが、ビジネス成果につながるのです。

 

いちいちお金を払わないサービスが伸びている

繰り返し購入するものは、手続きが面倒に感じることがあります。それを省いたのが、今、注目されているサブスクリプション型のサービスです。毎月一定額を支払うと自由に利用できるというサービスモデルです。動画見放題のネットフリックスや、音楽のスポッティファイ、マイクロソフトやアドビのソフトウェアもダウンロードで常に最新版が利用できます。


ビジネスモデル自体は、鉄道の定期券や、スポーツジムなど、同じ場所を使うようなサービスで、これまでにも行われていたものです。ネットの登場で情報のやり取りや流通コストが下がることで、新たな可能性を生み出しました。全てが成功しているわけではないですが、カバンや洋服、宿泊施設のシェアリング型の、ビジネスにも応用されて広がっています。


インターネットはこれまでの商習慣を打ち破っていくことができます。これまでよりも幅広くお客様を捉えてみると、新しいサービスが見えてくるかもしれません。

 

石原 強 (Tsuyoshi Ishihara)

株式会社アーチャレス 代表取締役社長 / デジタルマーケティングディレクター Webの黎明期である1996年からこれまで20年以上、大手企業のWebサイト構築、運用を手がけ、ネット戦略立案から社内体制づくりを企業担当者とともに実践してきたデジタルマーケティングのエキスパート

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